『ピタッ』と変身、ブラックマン

〜10 えんまさま編〜

 “えんまさま”の存在は大きい。例えばお片付けが遅いとき、「えんまさまー」と上に向かって呼んでみる。
「えんまさまー、あつやがねー、お片付け遅いんですー。降りてきてくださーい」
あつやは急にピッチをあげ、お片付けを始める。
「ほら、お片付けしてるよ」
それを確認した後、また上に向かって話しかける。
「えんまさまー、あつやお片付けしてますからー、来ないでくださ〜い」
それから耳を傾けるようにして
「あ、今、えんまさま泣いてるよー」
と、あつやに報告。
 あつやは“えんまさま”がちょっと怖い存在である。夜、寝ないときには“えんまさま”があつやの舌ベロを抜きにくるのだ。で、あつやが目を閉じて眠る準備にはいると「あ、えんまさま泣いちゃった。あつやのところへ来ようと思ったら、あつやが上手に“めんめ”つぶってるから来れなくて泣いちゃったよ」
 あつやはホッとしたように言う。
「そうだよ。もう来ないんだよ。」
 他にも泣いているとその声を聞きつけて“えんまさま”がやってくる。あつやがえんえん泣いているときに「あれ、今、“えんまさま”が来たんじゃない。あつの声を聞いて。ほら。」と耳をすます。あつやはピタッと泣き声を止め、「ほら、来てないじゃん」と強がりながら、涙目をふいている。
「あつやが泣きやんだから、えんまさまは来なかったんだよ」のきよみママの声に「えんまさま、泣いてるねー」と微笑むあつや。(ん〜、かわゆい笑顔。)

 “えんまさま”の前では素のままでダッシュで行動してしまい、『Blackman』に変身できないあつやであった。

 

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