『ピタッ』と変身、ブラックマン

〜01 誕生編〜

 「あつや、これは“あつや”と“まっこ”の二人だけのヒミツだからな」
そう手渡された黒ビールの王冠は“ブラックマンの証”だった。

 ここ、まっこのお店『居酒屋康(やす)』は、あつやとまっこの連絡場所の一つ。あつやのママ、きよみママは居酒屋さんが好きで、実家に帰ると必ずと言っていいほど弟まっこの居酒屋康に顔を出す。そして、今日、カウンター席でぐいぐい飲んでいるきよみママの隣の席で、まっこからブラックマンの称号を渡されたあつやなのだった。

 黒ビールが好きなきよみママがそのビールを注文すると待ってましたとばかりにまっこがカウンターの外へやってきた。
「あつや」
 そう呼んでからあつやが振り向くとあつやの額に“黒ビールの王冠”をピタリとくっつけたのだ。
「ピタッと変身、ブラックマン」と言いながらあつやは変身した。

 あつやは『がおれんじゃー』『かめんらいだー』『うるとらまん』や『はりけんじゃー』などの変身物が好きなためか変身技が得意だ。保育園でもおうちの中でも「やー」「とぉー」「しゃくどう! 変身」など日夜変身技を訓練している。そんなあつやなのでその場ですぐに「ピタッと変身、ブラックマン」の変身術をマスターしてしまったのだ。

 まっこはそろそろ変身できなくなっているお年頃らしい。お店も忙しく、ここ何年も変身技を使っていない。この時、あつやに伝授するにもあつやの方が早く変身のコツをつかんでしまったため、まっこもあわてて変身してみることになったのだ。
 二人して、「ピタッと変身、ブラックマン」。うん、なかなか決まってるな。あつやはカッコいい『ブラックマン』に一目惚れしたようだ。

 まっこからの指令はまだ無い。しかし、あつやは密かに準備していることがあった。きよみママには「あつの会社ねぇ〜」とお話ししているがその「あつの会社」こそがブラックマンの基地だったのだ。今日も富士山が見える「あつの会社」での1日が終わる。保育園とは違うのだ。あつの会社なのだ。その違いをわかって欲しいな。

 

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