『ピタッ』と変身、ブラックマン

〜03 ピンチ編〜

 今朝は本当に大変だった。果たしてこのまま歩いて保育園までたどり着くのか。

 小雨の中ぞうさんの付いた青色の長靴を履き、きよみママと手をつなぎ歩く道。雨の日は歩きにくい。雨に濡れないように胸元に『パトカー』のアイロンプリントがついている大きめの青い合羽を着てそれに付いているフードを頭にすっぽりかぶる。歩くたびにゆがむフードの先を、きよみママと手をつないでいない方の手でしっかりと押さえる。雨の日はただでさえ歩きにくいのに、今日は・・・。何が起こったか。

 「ずれるー」と騒ぐあつや。道の端で立ち止まりきよみママはチェックした。「おズボン、大丈夫だよ」きよみママは太いゴムの入ったズボンをあつやの腰元で確認後言った。「これ、ずれにくいと思うよ」あつやもママの確認を認識したようだ。そして再び雨の中歩き出す。

 しばらく後「ずれてるー」と大騒ぎのあつや。きよみママはおかしいと思いすかさずズボンの上から下着をチェック。ナント! おパンツくんがズリズリに落ちて、おズボンの中でお尻がすでに“プリン”と「はんけつ」状態のあつやだったのだ。「ああ、ごめん、パンツがずれていたのかー」。歩きにくかっただろう、あつやくん。きよみママはあつやの可愛いお尻を想像したのか、思いっきり笑っていたが、あつやはそれどころではなかった。先ほどから徐々に下〜に、下に移動するおパンツくんを身をもって体験していたのだ。
「ママ、笑わないでー」のあつやの声にきよみママも「はい、わかりました」と答えてくれたが、その口元はまだ笑っていた。

 きよみママは小雨の中、傘を差しながら合羽の下に手を差し入れてあつやのおパンツくんを引き上げ、おズボンのゴムにかかるようにあげてくれた。ふ〜、あのままだったらブラックマンに変身できなかったよ。でも良かった、これで無事に保育園にたどりつきそうだぞ。

 今日もあつやの試練は続くのであった。

 

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